大学院「MPHコース」開設記念シンポジウム レポート(2022.9.3)

青森県立保健大学大学院健康科学研究科 健康科学専攻博士前期課程

MPH(Master of Public Health)コース開設記念シンポジウム

「青森県の健康を丸ごと探求し、世界へ還元するMPH」

 

本学大学院における「MPH(Master of Public Health)コース」令和5年度開設を記念し、「MPHコースアドバイザー」として多大な御協力を頂いている4名のシンポジストをお招きして、令和4年9月、シンポジウムを開催しました。

 

【当日配付された資料集はこちら】PDFファイル(12041KB)

 

日 時  令和4年9月3日(土)10:00~12:00
場 所  青森県立保健大学
プログラム

0.開会挨拶

 佐藤 伸(青森県立保健大学大学院健康科学研究科 研究科長)

1.MPHコースの開設にあたって

 説明者 大西 基喜

     (青森県立保健大学大学院健康科学研究科 保健・医療福祉政策システム領域公衆衛生研究室)

2.シンポジストによる講演

 講演1 中山 健夫氏

     (京都大学大学院医学研究科 社会健康医学系専攻 健康情報学分野 教授)

 講演2 長尾 式子氏

     (北里大学大学院看護学研究科 先端治療看護学分野 教授)

 講演3 河原 和夫氏

     (医療法人社団崎陽会 日の出ヶ丘病院 院長、東京医歯科大学 名誉教授)

 講演4 中村 正和氏

     (公益社団法人地域医療振興協会 ヘルスプロモーション研究センター センター長)

3.意見交換

 座 長  吉池 信男(青森県立保健大学 学長)

 指定発言 藤原 武男氏(東京医科歯科大学医学科・大学院医歯学総合研究科 教授)

4.閉会挨拶

 吉池 信男(青森県立保健大学 学長)

 

開会挨拶

佐藤 伸(青森県立保健大学大学院健康科学研究科 研究科長)

挨拶概要

このシンポジウムは、MPHコースの内容・必要性を知っていただくと共に、公衆衛生とは何かを皆さんと一緒に考え、理解を深めていただくため開催している。本学大学院では、地域の健康と福祉、その未来を担う研究者と高度専門職業人の育成を目指して教育・研究活動を進めてきた。修了生は、保健・医療・福祉の各分野で活躍している。「修士(公衆衛生学)」の学位が加わることは、本県にとって有意義なものになるだろう。

本日のシンポジウムのテーマは「MPHコースの役割と期待について」。シンポジストは、本学MPHコースのアドバイザーとして御指導・御助言をいただいており、かつ日本の公衆衛生の分野をリードしている先生方にお集まりいただいた。シンポジウムの終わりには、明日から何かが変わるのではという期待や、学問的にワクワクする気持ちを得て頂けると確信している。

 

MPHコースの開設にあたって

説明者 大西 基喜(青森県立保健大学大学院健康科学研究科保健・医療福祉政策システム領域公衆衛生研究室)

説明概要

本学大学院MPHコースのミッションは、地域の公衆衛生の実務に指導的立場で貢献するエキスパートを育てること。

当コースでは、教育環境の充実、県立大学ならではの行政との連携、本県をモデルとした研究の推進、学びやすさの追求(土日祝中心の授業、オンライン対応、3年コースの設定等)に取り組んでいる。学びたい「想い」を実現し、本県の健康課題の解決に少しでも資することができればと思う。

 

 

講演1

中山 健夫氏(京都大学大学院医学研究科 社会健康医学系専攻 健康情報学分野 教授)

略歴

1987年 東京医科歯科大学卒、臨床研修後、同大難治疾患研究所、米国UCLAフェロー、

国立がんセンター研究所室長を経て、2000年 京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻助教授、

2006年 現職。2016‐19年 同医学研究科副研究科長・同専攻長、

2021年 公立大学法人静岡社会健康医学大学院大学副理事長(非常勤)、

2021年 日本疫学会功労賞。

厚生労働省・経済産業省 予防・健康づくりの大規模実証に関する有識者会議座長、

厚生労働省 特定健診・特定保健指導の見直しに関する検討会座長、

厚生労働省e-ヘルスネット情報評価委員会座長、

日本医療研究開発機構 健康・予防ヘルスケア社会実装事業プログラム・スーパーバイザー

/認知症事業プログラム・オフィサー、

日本医療機能評価機構Minds運営委員長、日本学術日本会議連携会員、等。

 

講演概要

「ローカルで 、それぞれ問題意識を持った人たちが、自分たちの地域を大事にする気持ちで学びに来て、また地域に戻っていくという仕組みが、MPHプログラムには大事。青森県立保健大学のMPHコースには、ぜひそのようなモデルになってほしい」とエールを送った。

 

 

講演2

長尾 式子氏(北里大学大学院看護学研究科 先端治療看護学分野 教授)

略歴

看護師 博士(保健学)

1993年 東京都立医療技術短期大学 看護学科 卒業

1993年 国家公務員共済 虎の門病院 看護部入職

2003年 京都大学大学院医学系研究科社会健康医学系専攻 博士前期課程修了

2008年 京都大学大学院医学系研究科社会健康医学系専攻医療倫理学分野 博士後期課程単位取得満期退学

2022年 北里大学看護学部臨床看護学 教授 (現在に至る)

 

講演概要

「看護師である私がMPHコースを修了したことで、学際的(公衆衛生学と臨床看護学の融合)な発想ができるようになった。この学際性は、これまでの自分の姿とは異なる新たな自分のキャリア開発へと繋がるはず」と語った。

 

 

講演3

河原 和夫氏(医療法人社団崎陽会 日の出ヶ丘病院 院長、東京医科歯科大学 名誉教授)

略歴

1986年4月 厚生省入省 健康政策局計画課  技官

1992年7月 厚生省保健医療局国立病院部政策医療課 課長補佐

1994年4月 福井県福祉保健部健康増進課 課長

1997年4月 厚生省保健医療局地域保健・健康増進栄養課 課長補佐

1998年9月 厚生省医薬安全局血液対策課 課長補佐

2000年4月 東京医科歯科大学大学院 政策科学分野 教授

2015年4月~2017年3月 東京医科歯科大学 副理事

2019年9月~2021年3月 東京医科歯科大学 医学部副学部長

2021年4月  医療法人社団 崎陽会  日の出ヶ丘病院 院長(東京医科歯科大学名誉教授)

 

講演概要

「社会・経済環境の変化は、我々の日々の生活や保健医療福祉提供体制にも大きな影響を与えている。我々がどのような状況に置かれているのか、現行の政策やデータを分析し、そこから得られた課題を解決するために必要な事柄を同定し、実施していくことが極めて重要。来年度からのMPHコースでは、『医のこころ』というフィルターを通して、学問を身に付けていただけるようにしていく」と語った。

 

 

講演4

中村 正和氏(公益社団法人地域医療振興協会 ヘルスプロモーション研究センター センター長)

略歴

1980年自治医科大学卒業。労働衛生コンサルタント、社会医学系指導医・専門医、日本公衆衛生学会認定専門家、専門は予防医学、ヘルスプロモーション、公衆衛生学。研究テーマはたばこ対策とNCD(生活習慣病)対策。厚労科研研究班代表者(2007-21年度)として、たばこ政策研究に従事。研究成果をもとに禁煙治療の保険適用、たばこ価格政策、特定健診における禁煙支援の強化などの政策実現に貢献。現職では、地域ぐるみのフレイル予防や減塩対策、プライマリケアにおける診療の質改善の研究などにも従事。

 

講演概要

「地域を愛するパッション、地域という患者を診る・看るマインド、課題解決能力・連携協働力・アドボカシー(働きかけ)力を備え、地域住民が元気に安心して暮らせるまちづくりに貢献できる人材を育成することで、地域や大学の強みを活かした『オンリーワン』を目指してほしい」と、本コースへの期待を語った。

 

 

意見交換

座 長  吉池 信男(青森県立保健大学 学長)

 

指定発言 藤原 武男氏(東京医科歯科大学医学科・大学院医歯学総合研究科 教授)

何のためのMPHなのかということを考えさせられた。入学する学生は真剣で、現場での課題を持っており、関心が高い。そういった方々を人材として輩出していくときに、MPH修了生はこういうところに就職できる、というシステムにはなっていない現状がある。青森県立保健大学大学院は、そういった現状を変えていけるだろうという期待を持っている。

学生には、医療・保健・福祉の現場の中で学び、公衆衛生マインドを培い、研究していくマインドも培ってほしい。社会福祉の柱を持つMPHコースは国内では珍しく、非常に魅力的。

10以上ある日本のMPHコースにおいて、共通のリソースを活用していくことも必要かと思う。青森県立保健大学大学院MPHコースが、オールジャパンでMPHを盛り立てていくためのハブとなっていくことを期待している。

 

意見交換概要

(吉池座長)長尾先生にお聞きしたい。本学大学院では社会人が8割で、仕事や子育てをしながら土日で学ぶことになるが、大学院に通われていた御経験と、働きながら学ぶということについてコメント頂きたい。

 

(長尾氏)2001年に京都大学大学院のMPHコースに入学したときには、大学院がフルタイムの時間割になっていた。当時は東京で働いており、京都まで通うことが現実的に難しかった。MPHコースに入った時に指導教員から、科目を履修する1年を何とか学んでもらえれば、あとはフィールドワークや研究活動になるため、1年休職はできないか、との助言を頂いた。しかし、勤務していた病院に休職制度がなかったために、一旦退職することとなった。今は多くの大学院が、働きながら現場の問題を大学院で学んで、学んだことを現場に返すといったことを重視している。大学院で学びながら、現場の課題に対面していくことが可能な状況は、魅力的であると思う。

 

(大西特任教授)中山先生にお聞きしたい。MPHコース修了者のキャリアについて、先生が関わってこられた経験から、今どういった状況で、どういう議論になっているのか教えていただきたい。

 

(中山氏)全国のMPHコースで、1,000人以上の修了者がいると思うが、その内訳は、医師が3分の1、医師以外の医療職が3分の1、医療職でない方が3分の1といったところかと思う。医療職の方は、パワーアップして現場に戻れるが、それ以外の方は、シンクタンクや広告代理店、最近だとデータサイエンス、製薬系に就職する方もいるようだ。20年前は、キャリアに繋がらないという議論も多くあり、今でも消えているわけではないが、かなり良い状況に変わってきているのではと感じている。

 

(吉池座長)中村先生にお聞きしたい。私たちのMPHコースの特色としては、地域医療、プライマリ・ケアとの親和性を意識している。地域医療で働く若い医師の先生方にメッセージを頂きたい。

 

(中村氏)特に総合診療を目指す方にとって、大学の中で公衆衛生の授業はあるが、実践現場における「どういう風に医療をやりながら、行政を含めた関係団体とどう付き合っていくか、どんなところを目指していくのか」というところまでの深い学びが、学部教育ではなかなかできない。地域に出て、医療を提供する中で感じた問題を、MPHコースに持ってきて、解決策を考える中で色々な学びをし、現場に戻って、大学とのつながりを持ちながらさらに活動していくという流れが、青森県だけでなく日本全体の動きになると、健康問題だけではなく、街を元気にすることもできるのではないか。是非、地方創生や街づくりを専門にしている方とも交流できるような仕組みがあると、希望する方や、やりがいも増えるのではと思う。

 

(吉池座長)河原先生にお聞きしたい。東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科において、厚生労働省や東京都の行政職、技官、事務官等にも御指導されたと思うが、そういった方々へのメッセージをお願いしたい。

 

(河原氏)東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科の医療管理政策学MMA)コースは、18時から開講であるが、時間までになかなか集まらない。土日に開講となると、平日しっかり働いて、土日に頑張るということで続けられる余地は十分にあると思う。内容的には、現状の制度の問題点等を検証しながら、次の行政計画や政策にどうつなげていくかというような授業を行っていきたい。修了生からは、それぞれの部署に就いて大学院での学びが活きたという声も多かった。厚労省からの受講生は、はじめは医系技官が多かったが、次第に減り、その代わり法令事務官が来るようになった。事務官の技官化が始まっているということである。事務官も法令は作るので、大学院での学びを活かせたようである。同じように、青森県でも県庁や市町村の方がそれぞれの政策を作る際、このコースでの学びは十分に活かすことができると思う。

 

閉会挨拶

吉池 信男(青森県立保健大学 学長)

挨拶概要

私たちは、真摯に真剣に、地域のためにMPHコースを開設する。

その気持ちを支えていただくのは皆さんである。

今日お越しの先生方にも助けていただきながらの船出となる。

まずは青森県の地域の方々に、この想いと、MPHコースのことを知っていただきたい。

 

(閉会)


青森県立保健大学大学院健康科学研究科 健康科学専攻博士前期課程

MPH(Master of Public Health)コース開設記念シンポジウム

「青森県の健康を丸ごと探求し、世界へ還元するMPH」

 

本学大学院では、公衆衛生分野のエキスパートを育成するため、令和5(2023)年4月から「MPH(Master of Public Health)コース」を開設することとなりました。

令和4年度より募集を開始するにあたり、保健医療福祉分野の専門職を含む県民の皆様等に対し、開設の趣旨や意義を周知し、本コースに興味を抱いてもらうことを目的として、シンポジウムを開催します。

 

PDFファイル

 

日時

 令和4年9月3日(土)10:00~12:00

会場

 青森県立保健大学 教育研究C棟3階 N講義室2(青森市大字浜館字間瀬58-1)

配信

 オンライン(Zoom)による同時配信も行います。

 ※会場・配信共に定員の都合により、参加をお断りする場合があります。

  会場定員50名程度、配信定員100名程度を予定しています。

対象

 青森県民、保健医療福祉分野の専門職及び一般事務職、大学生・高校生を含む、本テーマに興味・関心のある方

参加費

 無料

テーマ

 「MPHコースの役割と期待について」

シンポジスト

 中山 健夫 氏(京都大学大学院 医学研究科社会健康医学系専攻健康情報分野・教授)

 長尾 式子 氏(北里大学大学院看護学研究科 先端治療看護学・教授)

 河原 和夫 氏(医療法人社団 崎陽会 日の出ヶ丘病院・院長 東京医科歯科大学・名誉教授)

 中村 正和 氏(公益社団法人 地域医療振興協会 ヘルスプロモーション研究センター・センター長)

進行

 大西 基喜(青森県立保健大学大学院健康科学研究科 保健・医療・福祉政策システム領域公衆衛生研究室)

問合せ

 Tel:017-765-4085

 Mail:kenkou★auhw.ac.jp (キャリア開発・研究推進課)

 ※★は@に変換してください。

主催

 青森県立保健大学大学院、ヘルスプロモーション戦略研究センター、キャリア開発センター

後援

 青森県

 

 

★ MPHコースについて詳しく知りたい方は、こちらから各種資料を御覧いただけます。

 

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