附属図書館長あいさつ

図書館で「新しい世界」を感じてみませんか

学生の皆さん、「エコーチェンバー現象」という言葉をご存知ですか。同じような価値観を持つ人たちばかりが集まって共感し合うことで、その価値観から特定の意見や思想が増幅され、影響力をもつ現象のことです。 自分の意見と同様のものばかり見ていると、他の情報が入ってこなくなるものです。元々は「共鳴室(echo chamber)」を意味する言葉で、閉じた空間で音が響き渡る部屋のことを指します。 ソーシャルメディア やネット上の掲示板で“自分と似た価値観をもつユーザーの主張ばかり見るため、自分と似たような考えや価値観、趣味・嗜好を持った人たちが集まる閉鎖的な空間内で自分の意見や思想が肯定されることで、その主張が世の中における正解であるかのごとく勘違いしてしまう”と言われています。「いいね」「私も」と多くの人に共感・共鳴されると、「私は正しい」「誰もが同じ考えだ」と疑いなく信じてしまうというものです。エコーチェンバーの危険性は、知っておく必要があるでしょう。


私たちは過去の検索情報をもとに、似たようなコンテンツが表示されるようなインターネットのフィルターの傘下で、無意識に似た情報や視点に囲まれています。フィルターバブルと呼ばれ、閲覧履歴からすでに予測変換され、一番見たいであろうページが表示されます。他の情報を見る機会がなくなり、自分の都合の良い情報ばかり目に入ってしまいます。知りたい情報が手に入り便利ではあるものの、私たちは毎日、自分の関心のある事項・信じたい情報だけ触れている可能性があるのです。スマホをみて、スマホから新しい情報を得て、最新の知識を得た気持ちになっていても、それは自分の興味の範囲だけかもしれません。他の分野、他の領域、他の国、他の人の考えが入ってこないというのは怖いことです。

 

さて、本学の図書館には、たくさんの蔵書とデジタル化された情報、調べたい内容が検索できる環境、そして多方面にアドバイスをいただける専門の方々がそろっています。今まで、スマホで十分情報がとれていたと思っていた皆さんも、ぜひ図書館機能を利用して、図書を直に手に取ってみたり、自分の興味と異なるデータを検索してみたりしながら、初めての情報や知らない世界を図書館や図書館サイトを通して知っていただきたいと思います。


図書館の機能が1.情報提供の機能、2.教育的機能、と言われていた時代があります。今はさらに、3.多種多様な機能、と考えます。資料を持ち寄りグループディスカッションができる部屋を求める人も、ゆったり物を考えたいと思った人も、何かに悩んでいる人も、上手に図書館を活用して欲しいと思います。読書が好きな人だけが来る図書館である必要はないのです。もちろん「読む」ことが好きになってほしいのですが、他目的、多目的で良いと思います。時代も多様性の社会なのですから、広い視野を持つためにも、ぜひ一度図書館に足を運んでみてください。知の宝庫、新しい発見の源、異世界と呼ばれる場所で、ゆったりとした時間が流れるかもしれません。

 

附属図書館長

 附属図書館長 川内規会

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