AJHW抄録(日本語)

 https://doi.org/10.24552/00002203 ©青森県立保健大学

がん周術期患者の口腔ケアの有効性に関わる諸要因の検討

伊藤瑠美1),大西基喜2)

1 )青森県立保健大学 2 )青森県立保健大学健康科学部看護学科

 

抄 録

〔目的〕がん周術期患者の口腔ケアの有効性と口腔衛生状態の維持および改善に関わる要因について検討した。

 

〔方法〕対象者は初回のがん手術予定があり,術前準備の一環として医科より歯科介入依頼があった成人患
者とした。初診時は電子診療録より患者情報,がん治療情報,口腔内評価指標 5 項目を抽出し,歯周病患者
のセルフケアに対する自己効力感測定尺度(SESS)を用いた。手術後の評価は 3 ヵ月後とし,電子診療録
より初診時と同様の口腔内評価指標 5 項目の抽出と自己効力感測定を行った。術後呼吸器感染症罹患の有無
は電子診療録による術後経過,患者から歯科受診日までの肺炎・気管支炎・胸膜炎のいずれかにおける受療
の有無や入院歴,治療歴,禁煙状況について聴き取り調査を行った。

 

〔結果〕141名(男性68名,女性73名,平均年齢65.39±11.09歳)を解析対象者とした。 3 か月後,口腔内
評価指標は 5 項目すべてで有意に改善した(p<0.001)。術後呼吸器感染症罹患者は認めなかった。 2 週間
以上の術前歯科診療期間(p=0.002),SESS の変化量(p=0.001)はプラーク付着状況(PCR)改善に寄与
し,糖尿病を有すること(p=0.004)は PCR 悪化に影響していた。自己効力感では総得点(p<0.001), 3
つの下位尺度(p<0.001)すべてで有意に向上した。
 

〔結論〕2 週間以上の術前歯科診療期間が確保できることで口腔衛生状態は改善し,術後呼吸器感染症も認
めなかった。それに付随して自己効力感の向上にもつながった。
 

《キーワード》口腔ケア,周術期口腔機能管理,医科歯科連携,術前歯科診療期間,自己効力感