AJHW抄録(日本語)

https://doi.org/10.24552/00002171 ©青森県立保健大学

専門職養成は属性を超えて若者のキャリア選択に影響を及ぼすか ―地方の福祉系大学生・卒業生へのインタビューから―

廣森直子

青森県立保健大学 健康科学部 社会福祉学科
 

抄 録

〔目的〕 本稿では,地方大学の福祉系学生・卒業生へのインタビューからそのキャリア選択の内実を検討し, その選択と属性や社会的状況がどのようにかかわっているかを考察し,地方における専門職養成はどのよう な役割や機能を果たしているのかを考察する。

 

〔方法〕 半構造化インタビューを行い,インタビューデータを逐語録に起こし,MAXQDA ソフトを用いて コーディングによりキーワードを抽出し,属性(出身地,性別,家族関係)に関わるキャリア選択に焦点化 してカテゴリー化した。

 

〔結果〕 カテゴリーとして, 1 .強い地元志向と消極的選択としての県外就職, 2 .専門職志向と望む就職 先のギャップ, 3 .離家に関わる意識と家族関係, 4 .結婚観の内実とキャリア継続意識,を抽出した。

 

〔結論〕 大卒資格や専門職としての資格を得ることは,地元志向の強い人には地元にそれなりの地位を得て 残る手段としての機能を果たす一方,専門職志向の強い人には専門職としてよりよい環境を求めて(一時的 に)県外への移動を選択する手段として機能している。こうした選択は,「大学で福祉を学んだ」ことがそ れなりの意味や価値を持ちつつ,それを生かせる状況が地元地域に十分ないことへの対処の方法であると考 えられる。人は属性から影響を受けた選択をする傾向があるが,地方大学における福祉専門職養成は,属性 を超えて人生の選択肢を広げる機能を果たしてきた側面もあるともいえよう。

 

《キーワード》 専門職養成,キャリア選択,属性,地方の若者,福祉系大学生・卒業生