平成30年度卒業証書・学位記授与式式辞

 皆さん、ご卒業おめでとうございます。青森県立保健大学は、本日ここに、平成30年度の学部卒業生229名、博士前期課程生15名、博士後期課程生6名に、卒業証書・学位記を授与いたしました。本学の教職員を代表して、心からお祝い申し上げます。また、今日まで長い間皆さんを暖かく見守り育み、成長を支えてこられたご家族の皆様におかれましてはさぞやお喜びのことと存じます。まことにおめでとうございます。また、設置者であります青森県知事をはじめ、ご臨席賜りましたご来賓の皆様、ご指導ご支援いただきました方々にこの場をお借りして感謝申し上げます。ありがとうございました。

 さて、本学は今年度開学から20年がたちました。本学が送り出した卒業生は、皆さんを含め学部卒業生3,322人、大学院生243人、となりました。皆さんの先輩が本学で、あるいは各地の病院、事業所など、多くのところで活躍してくれています。旅立つ皆さんにとって心強い、頼りになる先輩達です。今度は、皆さん自身が後輩にとって頼りになる先輩になってほしいと思います。

 

 20年にあたる今年度、「健康とともに20年-未来につなぐ地域の健康-」をテーマに、本学は特にヘルスリテラシー(健やか力)の向上に取り組んできました。学部、大学院のカリキュラムを刷新し、研究成果の還元、地域の方々への貢献の各方面から、健やかであることの大切さを伝え、そしてそれを支える専門職の持つ力におおいに期待し、そうした人材の育成に取り組んできました。皆さんは新カリキュラムではありませんでしたが、健やかであることの大切さを核に、ヒューマンケアを実践できる人材としてここに、巣立っていってくれると思っています。本学のヘルスリテラシー向上への挑戦はこれからも続きます。どうぞ皆さんの力を貸してください。

 

 さて、健康であることへの関りの一方で、私は今年、いくつかの、命に向き合う経験をしました。それは、余命いくばくもないという宣告を受けながら、それでも最期まで自分らしく生ききろうとする人たちと、ともに時を過ごす経験でした。食べられることは生きる希望へとつながります。やせ細ったわずかな筋肉しか残っていない足でも、最後まで自分でトイレに行きたいという思いに応えて、少しでも動けるように支えることは、その人らしさを保つことに繋がります。そして最後まで安心して療養できる環境にいることはどんなに心の安らぎをもたらすことでしょう。人にとって医療的治療は希望です。しかし残念なことに医療的治療がなすすべがなくなったそんな時でも、人々が生きてきたそのことを意味あるものに昇華させることができる皆さんの力は、生ききることへの希望に繋がります。

 本学はヒューマンケアを提供できる人材の育成を目標に掲げています。人をケアするとは、心の痛みを感じとる思いやりと温かさを持ち寄り添うことです。人に寄り添うとは、今、この時をともに生きて在るということです。あなたのケアを必要としている人から目を背けないでください。人々が何を言いたいのか、あなたの耳を傾けてください。そして“何かお手つだいしましょうか”と、あなたの口から一言、言ってください。皆さんたちは希望です。どうぞ人々の命に寄り添い、まさにヒューマンケアを提供できる人材になってほしいと願っています。たくさんの人々を支えていってほしいと心から願っています。

 

 本学がめざすことのもう一つは、科学です。皆さんがいま着用しているアカデミックガウンと角帽は、その名が示すとおり、学問を象徴するものです。これは、卒業生の皆さんに、学問を修め、学位を取得することへの自覚と責任をもってほしいと導入したものです。ウィリアム・オスラーがいうところの「Practice is an art, based on science.」、すなわち学問にうらうちされたケア提供者になってほしいと思っています。

 さきほど、角帽についたタッセルを右から左へと移しました。そして卒業証書・学位記を手にした皆さんは、学士の学位を持った一人として、今日ここに旅立つことを意味しています。タッセルの色は学科のシンボルカラーを用いています。皆さんの専門分野にどうぞ誇りを持って、ヒューマンケアを必要としている人たちに尽くしていってほしいと願っています。

 大学院博士前期課程、博士後期課程の修了生の皆さんは、ガウンにフードを着用しています。そして紫のカラーは大学院のシンボルカラーです。また、タッセルはすでに学士の学位を持っているということで、最初から左側にあります。研究者、教育者として、そして保健医療福祉のリーディングパーソンとして貢献していくことを心から期待しています。

 

 本学の校歌である“新たな未来へ”は、「さあ、今始まる 終わらない旅路 「希望」へと向かう心は 新しい日を創る」という歌詞から始まります。未来へむけて旅立つために、「希望」という心があれば新しい日を創っていくことができると詩っています。そして最期は、「どんな時もずっと 忘れない 出逢えた奇跡を」と結んでいます。いまここにあることを大切に、みなさんが今この時をひとと共にあり、希望とときめきをもって未来に進んでいくことを、こころから応援し、卒業式に寄せる言葉としたいと思います。

 

 

平成31年3月7日

公立大学法人 青森県立保健大学

理事長・学長 上泉和子

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