令和元年度卒業証書・学位記授与式式辞

 皆さん、ご卒業おめでとうございます。青森県立保健大学は、本日ここに、令和元年度の学部卒業生237名、大学院博士前期課程生4名、博士後期課程生2名に、卒業証書・学位記を授与いたしました。本学の教職員を代表して、心からお祝い申し上げます。また、今日まで長い間皆さんを暖かく見守り育み、成長を支えてこられたご家族の皆様におかれましてはさぞやお喜びのことと存じます。まことにおめでとうございます。また、設置者であります青森県知事をはじめ、ご臨席賜りましたご来賓の皆様、ご指導ご支援いただきました方々にこの場をお借りして感謝申し上げます。ありがとうございました。

 本学は今年度開学から21年がたちました。本学が送り出した卒業生は、皆さんを含め学部卒業生3,322人人、大学院生24人、となりました。先輩たちは多くのところで活躍してくれています。心強い、頼りになる先輩達があなた方を導き、助けてくれることと思います。大学を卒業し旅立つ皆さんは、社会人として独り立ちしていくトランジッションの時にいます。本学の卒業生であることに誇りをもって、よき先輩として活躍してくれることを願っています。

 

 さて、今、この時、我が国で起こっている新型コロナウイルス感染者の発生は、この国を揺るがすたいへん重い出来事になっています。保健医療福祉におけるヒューマンケアを実践できる人材として、そして渦中にいる皆さんだからこそ、この出来事を感じ、しっかりととらえ、考えてほしいのです。

 感染症についての報道があって間もなくのこと、我が国は世界に先駆け、ウイルスの分離に成功したとの報道がありました。このことがあって、感染の検査ができるようになりました。そしてこれらと並行して、ウイルスの猛威から命を救うため、治療方法の探求や治療薬の開発が各国でフルスピードで行われていることでしょう。未知なるものを探求する挑戦、問題やわからないことからから逃げない精神、専門家であることの使命と覚悟。先の見えない不透明な時代に、私たちは改めて専門職としてのあり様を考えたいと思います。

 多くの専門家たちが命を守るために挑戦している一方で、人間が得た知識が求めている人に確実に届くまでの道のりには、様々なハードルがあることもわかりました。法律、制度、社会、文化。苦しんでいる人たちに知識が確実に届くまで、多様な専門分野、多様な人たちの力を結集することの大事さを感じました。大学では専門職の連携・協働という言葉は耳にタコができるほど聞いてきたと思います。このことを行うには、あなた方の心の目を開き、自分のバリアを解き放ち、俯瞰的、多面的に、見て、感じて、飛び立っていってほしいと願っています。あなたたちが何を感じ、何を考え、そしてあなた方は何になるのか、期待が膨らみます。

 

 ポール・ゴーギャンが描いた「われわれはどこから来たのか われわれは何者か われわれはどこへ行くのか」と題された絵があります。この絵には生命の始めを意味する若い女性と子供、真ん中には成人期を象徴した生命観あふれる人々、人生の終わりを意味する年配の女性。そして、背景に青い色の人をかたどった彫刻を描いていますが、ゴーギャンは人々の生命を超える何かの存在を象徴していると語っているそうです。ゴーギャンは、命と人生と、魂をこの絵に託したのではないでしょうか。健やかであることの大切さを核に、ヒューマンケアを実践できる人材になってほしいと、私もこの絵に託したいと思います。あなた方が何になって、再び巡り合えるのか、心から楽しみにしています。

 

 最期に、皆さんがいま着用しているアカデミックガウンと角帽について話させてください。アカデミックガウンはその名が示すとおり、学問を象徴するものです。これは、卒業生の皆さんに、学問を修め、学位を取得することへの自覚と責任をもってほしいと導入したものです。学問にうらうちされたヒューマンケアの実践者になってほしいと思う気持ちを込めています。さきほど、角帽についたタッセルを右から左へと移しました。そして卒業証書・学位記を手にした皆さんは、学士の学位を持った一人として、今日ここに旅立つことを意味しています。タッセルの色は学科のシンボルカラーを用いています。皆さんの専門分野にどうぞ誇りを持って、ヒューマンケアを必要としている人たちに尽くしていってほしいと願っています。

 大学院博士前期課程、博士後期課程修了生の皆さんは、ガウンにフードを着用しています。そして紫のカラーは大学院のシンボルカラーです。また、タッセルはすでに学士の学位を持っているということで、最初から左側にあります。研究者、教育者として、そして保健医療福祉のリーディングパーソンとして貢献していくことを心から期待しています。

 

 本学の校歌である“新たな未来へ”に、「巡る季節の中 交わす笑顔、道標にして まだ見ぬ世界へ 輝くもの 探し求めてゆこう」という歌詞があります。人の命を守り、人生を豊かにするために、あなた方の未知なるものへの探求を心から期待します。

 

 

令和2年3月10日

公立大学法人 青森県立保健大学

理事長・学長 上泉和子

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