令和3年度卒業式式辞

皆さん、ご卒業おめでとうございます。青森県立保健大学は、本日ここに、令和3年度の学部卒業生222名、大学院博士前期課程生11名、博士後期課程生2名に、卒業証書・学位記を授与いたしました。本学の教職員を代表して、心からお祝い申し上げます。本日ここに無事に卒業、修了を迎えることができましたのも、出席をご遠慮いただいておりますが、ご家族の皆様、コロナ禍においても現場での実習などを可能な限り受け入れ、また変更を快くご理解くださった保健医療福祉関連施設の皆様方、関係団体の皆様、そして設置者であります青森県知事の、ご理解、ご支援があってのことと、ありがたく、この場をお借りして心から感謝を申し上げます。

 

さて、2019年の12月に確認されたCOVID-19は、様々に形を変え、今もなお、あの手この手で私たちに挑戦しているかに見えます。本学では遠隔授業の導入、出校停止、行事の中止や変更など、感染防止と安全を第一に、細心の注意を払いながら、可能な限り大学活動を継続することとして取り組んできました。また、学生の皆さんには、サークル活動の禁止、アルバイトの自粛、多人数での飲食の禁止などをお願いしてきましたし、現在もこうした感染防止対策は続いています。

 

本学はヒューマンケアを実践できる人材を育成することを理念としてきましたが、コロナ禍で私たちが最もしなければならなかったのは、フィジカルディスタンシング(Physical Distancing)です。人との物理的な距離をおくことが最も必要とされました。このことはヒューマンケア(Human Care)の実践に大きな影響を及ぼしました。COVID-19感染者を治療する現場では、家族が面会できないこと、命が尽きるときでさえ愛する家族と会うこともできないことがおこり、ケアに携わった人たちから「1人で逝かせてしまった。最期をそばで見守ってあげられなかった」「納体袋に入れられ、誰にも顔を見られず火葬場に行ったかと思うと無念でしかたがない」といった声が聞かれ、傍にいることや触れ合うことの危機がおこりました。また、感染を恐れるあまり、疑心暗鬼、偏見、差別が生まれ、人との距離ができました。まさにヒューマンケアの危機が起こったと言えます。

新型コロナウイルス感染症対策に関するメルケル首相のテレビ演説の一説をご紹介します。2020年3月18日に行われたもので、日本語に訳されたものです。

「・・・・・それは(コロナ禍で大切なことは)、互いへの配慮から人との間に間隔を置くことです。ウイルス学者の助言ははっきりしています。握手はしない、手洗いを頻繁かつ徹底して行う、他の人との間隔を最低1.5メートルあける、そして今は、特にリスクの高い高齢者との接触を極力避ける。

これらを実際に実行するのが私たちにとっていかに大変なことか、私も承知しています。困難な時期であるからこそ、大切な人の側にいたいと願うものです。私たちにとって、相手を慈しむ行為は、身体的な距離の近さや触れ合いを伴うものです。しかし残念ながら現状では、その逆こそが正しい選択なのです。今は、距離を置くことが唯一、思いやりなのだということを、本当に全員が理解しなければなりません。」

 

ヒューマンケアを実践できる人材の育成を目指す分野で、触れ合うことや思いやることが危機に瀕しました。社会システム、家族システムも見直しを余儀なくされました。しかし嘆いてばかりいたわけではありません。私たちはこの経験から多くのものを学び、新たな知識や技術を手に入れました。新たなテクノロジーは対人援助の専門職を育成する大学でも様々な可能性を見せてくれました。科学者、専門職者の果敢なる挑戦が多くの人たちの命を救いました。感染看護の創始者であるフローレンスナイチンゲールは、「感染に恐れず立ち向かう。十分な防御をしながら。」と言っています。ケアとサイエンスの融合、しっかりした知識にねざした勇気ある行動、まさに本学が目指してきた、“サイエンスとアート”というヒューマンケアの両輪が一体となってなすことができたものです。

コロナ感染の脅威の中で、献身的に治療やケアに当たっている専門職がたくさんいます。本学を巣立つ皆さんがどのような仕事につくか、それぞれと思いますが、また、COVID-19へのかかわりは直接的、間接的であるかもしれませんが、皆さんが学んだ「ヒューマンケアの実践」を期待しています。皆さんがいま着用しているアカデミックガウンと角帽が意味するところの、学問を修め、学位を取得した保健医療福祉の専門職として、また研究者として、これからもどうぞ多くの人たちに貢献していくことを願っています。

 

この2年間、学生の皆さんや教職員とともに、COVID-19と向き合ってきましたが、様々な制約を守るのみならず、皆さん自ら対応を考え実施する姿に触れることが、たくさんありました。この経験を通して、私の考えは大きくかわりました。当初は学生の皆さん、教職員、地域の方々をどうやって守るかを主軸に検討を進めてきました。しかし、学生の皆さんの自立した力を知るにつけ、ともに戦う同志のような力強さと成熟さを感じました。私自身にとっては反省すべき点でしたが、ほんとにうれしいことでした。苦労はあったかと思いますが、皆さんは困難に負けずさらに新たな何かを創り出す力を持っています。そのことを十分に私たちに見せてくれました。どうぞ誇り高く旅立っていってほしいと思います。

今年の卒業アルバムのタイトルは「群青」でした。大空に突き抜けるような、深く美しく、澄み切った群青はまさにいま力強く飛び立とうとする皆さんのようでもあります。皆さんの前途を祈って式辞といたします。

卒業おめでとうございます。

 

令和4年3月10日

青森県立保健大学 学長 上泉和子

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