令和7年度卒業式式辞

 

 本日、健康科学部を卒業され学士の学位を授与された222名の皆様、大学院健康科学研究科博士前期課程を修了され修士の学位を授与された24名の皆様、博士後期課程を修了され博士の学位を授与された4名の皆様、ご卒業・ご修了、誠におめでとうございます。
 皆様のたゆまぬ努力が実を結んだこの佳き日を、心よりお慶び申し上げます。また、これまで温かく見守り、支えてこられたご家族・関係者の皆様にも敬意と祝意を表します。加えて、本学の設置者である青森県をはじめ、日頃より教育・研究にご理解とご支援を賜っておりますすべての方々に対し、大学を代表して厚く御礼申し上げます。

 

 皆様にとって、このキャンパスと豊かな自然に抱かれた青森で過ごされた歳月は、いかがでしたでしょうか。そこには、かけがえのない仲間との出会い、深い語らい、思索のときがあり、そして時には困難な壁に直面し、それを乗り越えた時の達成感や大きな喜びがあったことでしょう。世の中には、越えなければならない壁が幾重にもあります。個人として、また社会として、生きることは決して易しいことではありません。人類の長い歴史を顧みれば、この小さな惑星にホモ・サピエンスが誕生して以来、厳しい自然環境、他の生物との関わり、そして人と人との間に生じる対立や矛盾の中を、私たちは歩んできました。その歴史の一里塚として、ここ青森には三内丸山遺跡が残されています。私たちは現在の社会が直面する大きな壁をどう越え、どのような未来を描くべきかを考えていかなければなりません。三内丸山遺跡を訪れ、古代の人々の暮らしや思いに触れると、歴史を振り返りながら考えていくこと、そして狭い世界にとどまらず、国、世界、地球環境を含めた広い視野を持つことの重要性に気づくことでしょう。

 一人ひとりが自分らしく生きる―すなわち、Wellbeingを実現するための重要な鍵が「ヒューマンケア」です。この学び舎に集い、ともに研鑽を積まれた皆様は、すでに優れたヒューマンケアの担い手です。卒業後、それぞれの場で、人々のWellbeingを支える存在として、皆様が活躍されることをたいへん楽しみにしています。

 ここで、「目の前のこと」と「将来のこと」という二つの視座から、ヒューマンケアについて考えてみましょう。臨床の現場では、眼前の患者さんが抱える病や困難に対し、専門職として迅速かつ適切に対応することが求められます。一方で、病気の背景にあるさまざまな要因を、社会的・構造的な課題を含めて深く理解して、予防的なアプローチを考案し、未来を見据えた対策を講じることも、同じく大切なことです。たとえば、この冬、私たちが経験した記録的な大雪は、多くの示唆を与えてくれました。雪のために市民生活が困難となる中で求められた除排雪や緊急支援は、まさに「目の前のこと」への対応です。しかし同時に、地球規模の気候変動や都市設計といった長期的な視点から「将来のこと」を考え、備えることの重要性もあらためて感じたところです。

 現代社会は、「目の前のこと」や短期的な利益に意識が向きがちで、ともすれば自己中心的で排他的な風潮が強まっているように危惧されます。皆様が本学で学ばれた専門的な知識や技術に加え、社会を深く見つめ、学び続け、自立した市民として行動する力は、「目の前のこと」だけでなく、「将来のこと」にも大きく寄与できると確信しています。そして、多様性を尊重し、広い心と思いやりをもって、人と地域に寄り添う専門職としてご活躍されることを、心から願っております。

 この後の学位記授与式第二部では、顕著なご活躍をされている本学卒業生のお二人に「特別奨励賞」を授与し、その歩みをご紹介いただきます。それに続く皆様のご活躍にも、大いに期待しています。大学は、研究を通じて新たな「知」を創造する場でもあります。特に大学院を修了された皆様は、各自の研究テーマと真摯に向き合い、仮説を立て、研究計画を練り上げ、データを収集し、分析し、論文にまとめる、その一連の探求の過程を経験されました。研究成果の一部は後ほど紹介していただきますが、壁を乗り越えて「将来のこと」を構想する上で、研究は極めて重要な礎となります。学部卒業生の皆さんも、卒業後のキャリア形成の過程の中で、専門性を高める道として大学院に進学し、研究に関わることも選択肢の一つとしていただければ幸いです。

 

 青森県立保健大学は、これからも皆様にとっての「ホームグラウンド」であり続けます。どうか遠慮なくこの学び舎を訪れ、教職員に声をかけてください。いつでもお待ちしています。

 

 結びに、本日ご卒業・ご修了されたすべての皆様のますますのご健勝とご活躍を心よりお祈り申し上げ、式辞といたします。

 

 

令和8年3月10日

青森県立保健大学 学長 吉池 信男

 

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