平成31年度入学式式辞

学部新入生の皆さん、そして大学院新入生の皆さん、ご入学まことにおめでとうございます。本日、ここに、健康科学部新入生226名及び編入生3名の計229名、並びに大学院健康科学研究科博士前期課程生10名、博士後期課程生7名、計17名の新入生の皆さんを、迎えることができました。青森県立保健大学を代表して、多くの難関を突破しここにいる新入生の皆様、ならびに入学されたお子さんをこれまで見守り、支えてこられた保護者の皆様に、心よりお慶び申し上げます。また、ご臨席いただきましたご来賓の皆様、後援会、同窓会の皆様にあつく御礼申し上げます。在学生、教職員一同、心から歓迎いたします。

 

青森県立保健大学は、開学から20年がたち、本学が送り出した卒業生は、学部卒業生3,322人、大学院生243人、となりました。第1回目の入学生は、もちろん先輩はいなかったわけですが、お互いに協力しながら力強く成長していってくれました。今は先輩達が、本学で、あるいは各地の病院、事業所など、様々なところで活躍してくれています。大学院修了生もまた、保健医療福祉の分野で研究、教育、政策などのリーディングパーソンとして、重要な役割を担って活躍しています。在学生ももちろん、新入生の皆さんの学修に、力強い先輩となってくれることでしょう。同窓会の組織も年々充実し、後輩や在学生に対して重要な役割を果たしています。どうぞ、この大学での学びや大学生活を、安心してのびのびと、精いっぱい過ごしていってほしいと思います。

 

さて、本学は保健医療福祉の専門職を育成する大学で、所定の課程を修了すれば、看護師、保健師、助産師、理学療法士、社会福祉士、精神保健福祉士、管理栄養士、の各国家試験受験資格を得ることができます。ところでこれらの資格は大学ではなくても得ることが可能です。

では、皆さんのように大学で学ぶこととはどんな意味があるのでしょうか。

たいへん興味深い研究結果があります。「大学卒の看護師が10%増えると患者の死亡率が5%減る」という研究が、Linda H. Aikenらにより2003年にアメリカ医師会誌(JAMA)で発表されました。さらに、同じ研究グループが欧州で追試験を行ったところ患者の死亡率が7%減るという結果も2014年に英国のLancet誌で報告されています。どのようなことがこうした結果をもたらすのでしょうか。

看護の例をここに示しましたが、これは他の学科の専門職にも共通しています。患者や利用者の方達への現場での優れた実践者であること。また実践をよりよい方向へと変えていく変革者であること、質の高いケアに結びつくための研究を行う研究者となること、などが保健医療福祉サービスの向上に大きく寄与しているのは確かです。皆さんはこうした結果を導く、大切な人たちです。

 

皆さんは学士力という言葉を聞いたことがありますか? 大学には様々な学問分野がありますが、分野を超えて学士課程教育が共通して目指す「学習成果」のことをいいます。一つ目は「知識・理解」で、専攻する特定の学問分野における基本的な知識を体系的に理解するとともに、その知識体系の意味と自己の存在を歴史・社会・自然と関連付けて理解する。二つ目は「汎用的技能」と言われるもので、皆さんが職業生活や社会生活でも必要となる技術です。三つめは「態度・志向性」で、(1)自己管理力(自らを律して行動できる)、(2)チームワーク、リーダーシップ(他者と協調・協働して行動できる。また、他者に方向性を示し、目標の実現のために動員できる。)、(3)倫理観(自己の良心と社会の規範やルールに従って行動できる)、(4)市民としての社会的責任(社会の一員としての意識を持ち、義務と権利を適正に行使しつつ、社会の発展のために積極的に関与できる。)、(5)生涯学習力(卒業後も自律・自立して学習できる。)ことです。四つ目は「統合的な学習経験と創造的思考力」で、これまでに獲得した知識・技能・態度等を総合的に活用し、自らが立てた新たな課題にそれらを適用し、その課題を解決する能力のことを言います。

本学では、専門的知識・技術を身につけるための内容に加え、これらの学士力を備えていくための内容も含んだ、“青い森のカリキュラム”を策定しました。皆さんはこれからこのカリキュラムで学び、“学士”を授与されることになります。どうぞこの意味を心にとめてほしいと思います。

 

最期に、わずか17歳でノーベル平和賞を受賞した、パキスタン人のマララ・ユスフザイさんのスピーチの一部を紹介しましょう。

「当時はテロがあり、女性は家の外に出ることが許されず、女子教育は完全に禁止され、人々は殺されていました。当時、私は学校に戻りたかったので声を上げる必要がありました。私も教育を受けられなかった女の子の一人でした。私は学びたかった。私は学び、将来の夢をかなえたかった。

I needed to raise my voice because I wanted to go back to school. I was also one of those girls who could not get education. I wanted to learn. I wanted to learn and be who I can be in my future. I also had dreams like a normal child has.」

 

学ぶことができるこのチャンスを大切に、高い志をもって、あなた方自身の将来の夢をかなえてください。そしてあなた方を必要としている人々に、どうぞ力をかしてください。私たちはあなた方を応援しています。

 

ご入学おめでとうございます。

 

平成31年4月2日

公立大学法人 青森県立保健大学

理事長・学長 上泉 和子

ページの先頭へ

ホームへ戻る