令和2年度入学式式辞

本日ここに令和2年度の入学式を行うあたり、青森県立保健大学の教職員を代表して、皆さんの門出を祝って一言ご挨拶申し上げます。

  青森県立保健大学の健康科学部新入生228名及び編入生3名の計231名、並びに大学院健康科学研究科博士前期課程生10名、博士後期課程生6名、計16名の新入生の皆さんを、第22回目の入学式に迎えることができました。ご入学まことにおめでとうございます。入学されたお子さんをこれまで見守り、支えてこられた保護者の皆様、心よりお慶びを申し上げます。また、設置者であります青森県知事をはじめ、ご臨席を賜りました、ご来賓の皆様、後援会、同窓会の皆様に心から御礼申し上げます。在学生、教職員一同、心から歓迎いたします。

さて、令和2年の春、青森では例年になく雪の少ない冬を過ごし、桜の開花も早まるのではと思っていた矢先、世界中に新型コロナウイルスの嵐が吹き荒れ、私たちは今、ウイルスによる大きな挑戦を受けています。

本学では、今日の入学式を行うべきか否か、また行うにしても、どのように行うべきか、日々変化する状況の中で、検討に検討を重ね、その結果、感染防止に細心の注意を払い入学式を執り行うことといたしました。皆さんにとって新しい門出となる大事な入学式です。また、保健医療福祉におけるヒューマンケアを実践する人材をめざす皆さんだからこそ、そしてこの渦中にいる皆さんだからこそ、この出来事を感じ、しっかりと心にとめ、考えてほしいと思い、入学式を準備してきました。

世界中で、私たち人類は、未知との戦いを続けています。ウイルスの猛威から命を救うため、治療方法の探求や治療薬の開発が各国で協力しあいながらフルスピードで取り組まれています。健康を害され、療養生活を余儀なくされている方たちに、多くの保健医療福祉の専門職が、一日でも早い健康と生活の回復を願ってケアの提供に果敢に挑んでいます。未知なるものの探求への挑戦、問題やわからないことから逃げない精神、専門家であることの使命と覚悟。挑戦とは、できることをするのではなく、できないことをすることです。これから学ぶ皆さんにとって、専門職とは何か、研究者とは何か、今、ここで考えてほしいと思います。

多くの専門家たちが命と健康を守るために挑戦している一方で、人間が得た知識やケアが、求めている人に確実に届くまでの道のりには、様々なハードルがあることもわかりました。法律、制度、社会、文化。苦しんでいる人たちに確実に届くまで、多様な専門分野、多様な人たちの力を結集することの大事さを痛感します。専門知識を深めることはもちろんですが、あなた方の心の目を開き、自分のバリアを解き放ち、俯瞰的、多面的に、見て、感じてほしいと思います。

イタリアでの爆発的な感染拡大にあって、学校封鎖をせざるを得なくなった状況で、ある学校の校長のメッセージが掲載されていました。ペストの大流行がおこった17世紀のミラノを描いた小説の一文を紹介して、『「外国人への恐怖」「感染源のヒステリックな捜索」「デマ」「必需品の略奪」などの状況は、今日の新聞から出てきたかのようだ』と言っています。SNSでのデマや無神経な書き込み、感染者などへの差別や偏見、必需品の買い占め、等々。まさに同じことがおこっています。この校長先生はさらに言っています。『冷静さを保ち、集団の妄想にとらわれないこと。17世紀に比べて私たちには現代の医学がある。社会と人間性という最も大切な財産を守るべく合理的な考えを持ちましょう。』と。みなさんは保健医療福祉におけるヒューマンケアを実践する専門職となるべく、この場にいます。どうぞあなたたちの人間性を高め、高い志をもって、ヒューマンケアの担い手になるということを、肝に銘じてほしいと思います。 あなたたちが何を感じ、何を考えてこれからを始めるのか、そしてあなた方は何になるのか、期待が膨らみます。

本学は、今後ともより一層、地域の“健康と福祉”の未来をリードする大学として邁進してまいります。どうぞ皆さんの力を貸してください。凛とした皆さんのみなぎる力に大いに期待して、歓迎のあいさつとかえさせていただきます。

 

令和2年4月7日

公立大学法人 青森県立保健大学

理事長・学長 上泉和子

ページの先頭へ

ホームへ戻る